自己改善プログラムの終わり

数年前に、この自分というのは実体のないただの思考に過ぎない、ということに気づいてから徐々に自己改善への意欲が減ってきてしまいました。

ここでいう自己改善とは、ピアノがもっと上手に弾けるようになりたいとか、もっと水泳を上達したいといった目に見える物理的なものではありません。

そうではなくて、自分自身の問題、性格上の事柄や人としてどういう人物かといったようなことです。そういうものを改善しようという向上心が失せてきてしまいました。

自分の心にできるだけ耳を傾けているようになると、それはもう無数の叫び声を聞くことができるのです。とても改善などという方向へは行かないということが分かったのです。

自分が生きてきた中で、積み重ねられてしまった数多くの不満や想い、そういったものを都合が悪いからと言って切り捨てることもできないと分かったのです。

その結果、向上心という名前の自己改善に見切りをつけたのです。それよりもずっとずっと大切なことがあるからです。

それは、本当は改善するということではなくて、あらゆる心の声から逃げないことこそが大事なのだと。逃げずに裁かずにいる、そういう位置を見出すことです。

心の声はすべて過去のものです。過去は必ず、未来へとその影響力を行使しようと常にねらっているのです。それは決してなくなりません。

そこから目を離さないですべてをありのままにすくい取ってあげることです。それは沢山の可愛らしいペットたちに、愛の目を配ることと同じです。

ペットたちは、改善などしなくてもいいし、そのままで愛らしいのですから。

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