何もなさに死は通用しない

坂本龍一さんが亡くなったというニュースを目にしました。何年か前から癌と戦っておられるということは知っていましたが‥。

私とそれほど歳の差がないので、人ごとでは済まされない気持ちになります。癌の場合は、死の直前まである程度しっかりした状態で生活できるのですね。

ただニュースの中で、最期の方はあまりにも苦しいのでもう死なせてくれないか?と訴えられていたというようなことが書いてありました。

末期癌の苦痛は当然人によって違いがあるのでしょうけれど、何年も戦ってきてもうすでに先が分かっている状態で、苦しみ続けなければならないのは酷なことですね。

可能な限りの緩和ケアなどの処置ができていたのか、その辺はわかりません。ただもうそろそろ生き続けることに価値があるという石頭的発想はやめる必要があると思います。

九十四歳になって歩くこともできなくなって、何の楽しみもなくなってしまった母親が、早く死にたいと訴えてくるたびに、どうにもしてあげられないのが辛いです。

そんな時私はそんなこと言わないで、などと死を誤魔化すことなく、真正面からもうすぐだからねと言って慰めるようにしています。

実際人生というのはあっという間の出来事なのだと思うようになったのです。これが自分だと思い込んできた自分は、確かに死ぬ運命にあるのです。

けれども、その奥深くにある何もなさは死にようがないと分かります。死ぬようなものがないからです。ここの感覚をもっともっと強めていきたいと思います。

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