心は傷つかない

傷心旅行とか、心を傷つけられてひどく落ち込んだとか言うように、私たちは通常心は傷つくものだと思い込んでいます。今日はそれを覆したいと思って今書き始めました。

なぜ心が傷つくと思うのでしょうか?確かに、好きな人に裏切られたり、人からひどい暴言を吐かれたりしたら、心が痛む、痛手を負うという経験をします。だから心も身体と同じように傷つくものと解釈しているのです。

勿論、心は身体のような物理的な実体があるわけではないので、その傷は見たり触れたりすることはできないので、ある意味比喩的な言い方であることは分かっています。

身体は確かに傷つきます。そして、その身体の中に心が宿っていると一般的に思われていますね。人によっては、心というのは身体の一部としての脳の働きによって起こる物理現象に違いないと思ってるわけです。

そういう意味では、初めに身体があって、その上で心というものを発生させているという捉え方ですね。だから、身体が傷つくのと同様に心も傷つくと思っているのです。

傷つくというのは、実は身体の死というものから連想されるものなのです。傷つく度合いが小さければ、死をイメージすることはありませんが、それでも傷つけられるということは死の方向へ近づくことを思わせるのです。傷の度合いが大きければ直接的に、死をイメージしやすくなるだけです。

身体は必ずいつか死を迎えるし、今この瞬間に死がやってくる可能性もないわけではありませんね。つまり、身体である私たちは生まれたときからいつも死と隣り合わせに生きているということです。これが傷付くという原因です。

ではもし、身体があるから心があるのではないとしたら、どうなるでしょうか? つまり、身体とは無関係に、あるいはまず心というものがあって、その後で身体が作られたとしたらどうでしょう?

心と身体は全く別物という捉え方をするということです。こうなると、死は身体だけのものとなるため、傷つくのも身体だけだということになります。こういう考え方を唯心論というように呼ぶこともできるかもしれません。

つまり、自分というのは心あるいは魂であって、この世に生まれてきて肉体という乗り物に乗って生活をし、その乗り物が死によって使えなくなったときに、とりあえずあの世に戻るということですね。

しかし、たとえ自分は唯心論者だと言っている人がいるとして、その人が心も傷つくことがあると思っているのでしたら、残念ながら心の奥では心と身体を混同しているということになるのです。

好きな人に裏切られると心が傷つけられたと感じるのは、そのことが見捨てられる恐怖につながっているからです。それは幼い頃に感じた、親から見捨てられたら自分は生きてはいけないという怖れです。これは肉体的な死と直結しています。だから、身体と心を混同していれば、傷つくという状態を感じるのです。

人からひどい暴言を吐かれて、心が傷ついたと感じるのも、幼い頃に親に怒られたり否定されたりして、愛を感じない状態のときに、やはりこれでは生きてはいけないと感じた経験が元になっています。それもやはり物理的な死と直結しているからこそ、身体の死を心の死と同じものとすることによって、心が傷つくと思ってしまうのです。

心は傷つくことはないということをしっかり認識することができたとしたら、私たちの人生はどんなふうになるでしょうか?それは少しは楽になるかも知れないなどというレベルではなく、きっと激変してしまうはずです。

なぜなら、私たちは身体が傷つけられるのを怖れている以上に、心も傷つけられるのを怖れています。そのためにできるだけの防衛をしようと毎日エネルギーを使い続けているのです。

ですからその一方である、心が傷つくことはない、ということになったら、単純に考えても日々の防衛が半分で済むことになってしまいます。原始時代や戦国時代であれば、身体の防衛が中心となる毎日になるかもしれませんが、この現代では身体を防衛しなければならないことはそれほど多くはありません。

ということは、心を防衛せずにいられるようになるということは、ほとんど防衛せずに生きていけるようになるということを意味します。これはエゴを使わずに生きることに近づくことを意味します。

その結果はこのブログを読んでおられるみなさんでしたら、すぐに察しがつきますね。つまり、エゴの防衛を使わないということは無防備になるということ、それは愛で生きるということを意味します。死のない世界は愛の世界となるのです。

私自身もまだまだ心が痛むという経験をしますので、心と身体を混同してしまっている部分が残っているということです。でもいつの日か、自分自身の本質は身体ではないということが本当に分かるときがきて、愛の心だけで生きられるようになりたいなと思っています。

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