会社員だったころ、いつも不思議に思っていたことがあるのですが、それは会社というところは現状維持では駄目だということでした。
昨年よりも今年、今年よりも来年業績が上がらなければならないという不思議な使命のようなものがあったのです。
どこかで資本主義社会の宿命だというようなことを聞いたこともありましたが、本当のところはどうなのか今もって分かりません。
ただとにかく、会社の業績は右肩上がりでないと健康な会社ではないと言われていました。業績を上げるためには、従業員の数も増やさねばならないし、規模がより大きくなるということも命題のような感じでした。
確かに毎年ほんの少しずつかもしれませんが、給料も上がっていったのでそういうことなのかもしれないです。年齢とともに、家族を持つようになったりして若いときの給料のままだと生活が成り立たないからということもありますね。
しかし従業員の給料を上げるためだけであったら、高給取りの人々が退職していくことによってもそれはある程度まかなえるのではないかと考えたこともありました。
私自身は現状維持では社会も人間も駄目なのだという考え方に昔から違和感を覚えていました。よりよくしていこうというと、何となく上昇志向のようで悪くないのですが、そこには今のままでは駄目だという否定的な感覚が潜んでいるのです。
もっと早く、もっと強く、もっと多く、もっと快適にということを続けている限り、本当の心の平安は決して手に入れることができないと思います。
進歩を必要とするのはエゴの考え方なのです。芸術や愛にはそうした進歩というものは元々ありません。現状を受け入れるという心の状態になることこそが本当の幸せになることなのですから。