このセラピストという仕事を通して、多くのクライアントさんの心と向き合っていると、私たちがいかに今この瞬間に生きていないかということを思い知らされます。
残念ながら、過去と未来にのみ意識を向け続けて生きているということです。そのことに、私たちは一体どれだけ気づいているのでしょうか?
セッションの中で、なぜこれほどまでに過去のことに焦点を合わせていくかと言えば、忌まわしい過去から逃亡し続けているからです。
あるがままの過去をしっかりと見て、あらゆる過去から一切逃げずにいることができるのなら、過去の苦しみが現在の自分を追ってくることはなくなります。
私たちは、本当は今この瞬間には何の問題も抱えてはいないのです。問題だと認識することは、すべからく過去からのつながりにおいてなのです。
過去の問題を今の自分から切り離していればいるほど、その過去の思いというものが今の自分を責め立てることになるのです。
だからセラピーでは、過去に立ち返るのです。過去には何の意味もないということを知るためにこそ、過去に意識を向ける必要があるのです。
過去のどの物語であろうと、どんな場面だろうが、わけ隔てなく見に行くことができるようにならなければ、必ず未来へと負の遺産が運ばれていくことになるのです。
このことを深く理解することが大切なのです。問題は現在にあるように見えても、それは過去にあったことでしかなく、それを未来へと投影してしまうのです。
私たちは、本当は過去から未来へと連続した時間の中にいるのではありません。すべては、不連続な独立した瞬間から成り立っているのです。
過去を全部心底まで味わうことです。そうやって初めて、なにものをも未来へ投影することがなくなるのです。
そうなれば、安心して今現在を享受することができるようになるのです。これは決して刹那的なその日暮しをただ意味するものではありません。
エネルギーを向ける場所を、ただ本当に実在する今現在へと向けることができるようになるということです。