思考そのものには、いいも悪いも何もありません。ただし、「私」という思考とリンクする思考なのかどうかによって、その思考はまったく異なるものとなるのです。
「私」という思考とはリンクしない思考であれば、それは動物であっても起きるものです。たとえば、犬が障害物を迂回していくとか、チンパンジーが棒切れを使って餌を取るなどの場合を見れば、明らかです。
動物だって、我々人間と同じように思考するのです。けれども、そこには「私」という思考が入り込む余地がないので、シンプルな思考であるのです。
その思考が自己防衛に使われる場合もあるでしょうが、それは本当に生物としての命を脅かされるような場合がほとんどだと言えると思います。
逆に、我々のような人間であっても、動物のように「私」とは関連しない思考を使う場合もあります。ほとんど自覚なしに運転しているときとか、自分以外の何かに夢中になっている場合などです。
しかし、人間の場合には、多くの思考が、「私」という思考とリンクしています。その場合の思考は、ほとんどが過剰な自己防衛のために使われるのです。
本当のところ、生命の危機的状態ではないにもかかわらず、必死になって思考を使って自己防衛をし続けているのです。
それがあまりにも激しく継続していると、常に頭がグルグルと目まぐるしく動いてしまっているという状態になって、それについては本人も自覚があるはずです。
そうした思考を止めようとしても、なかなか思い通りに止まってはくれないのです。こうなると、もう思考が自分を支配しているようなものです。
瞑想などによって、心を静かに落ち着けることが苦手な人は、こうした傾向が強いうことに気づくべきです。
そのような場合には、日ごろから自分の思考を監視する癖をつけるといいと思います。そうすれば、思考に巻き込まれてしまうことから開放されるようになるはずです。
それは同時に、自己防衛に使っていたエネルギーも落としていけることになるのですから、是非思い出したときには実践してみることをお勧めします。