私たちは一生を通して、いろいろな体験をしたり見聞を深めながらも、人物として成長していくのです。考え方や生きる姿勢などが変化することもあるはずです。
けれども、人生のどこを切り取ってもまったく変わらない自己がいつもそこにいたということに気づいているでしょうか?
その自己は今も、10年前も、5歳のときであろうと、少しも変わらずにここにいたのです。それは間違いなく人物などではなく、その変化する人物を変わらずに見ていたのです。
常日頃自分のことを一人の人物として認識していながらも、表現しようのない形も姿もない自己は確実にいつもここに在るのです。
その自己から自分という人物を見ると、自分は絶えず自分自身を何とか改善したいと思っているし、そのために様々な努力をしていることに気づきます。
それが自己防衛としての色合いを濃くしだすと、人物の自分は苦悩することになってしまいます。でも、彼はなかなかそれを止めることができないでいます。
本当の自己は、そうした自分をあるがままに見ているだけです。殊更に肯定的に見ようとすることも、否定的に捉えることもありません。
ただただ、その時々の自分を丸ごとあるがままに見ているだけなのです。そこには、信念も、意志も何もありません。
徹底的にどんな自分であろうと、そのままを見ているのです。人物の自分がそのことに気づくと、本当に救われる気持ちになれます。