自分がいつか死ぬということを知っているのは、私たち人間だけなのですが、その死についてとても不思議なことがあります。
それは、多くの人々にとって死を恐れているという事実があるということです。少し考えれば、それが論理破綻していることは明白です。
というのも、死というのは死を恐れているその自分が消え去るということなので、その恐れも消えてしまうわけです。
死によって消え去ってしまうのは、恐怖だけでなく、自分自身が抱えてきたあらゆる苦しみや不安、怒り、孤独などの否定的なもの一切合切も含むのです。
であれば、ああやっと救われることになると思ってもいいはずですね。では死に対する恐怖とは一体何なのか?
それは自我によってでっち上げられた恐怖なんだろうと考えています。自我にはきっと死を恐れることの都合の良さがあるのです。
死を恐れることで、生きている間ずっと心理的な自己防衛を継続させられるからです。そうした生との戦いこそが、自我の存続に貢献するのです。
もしもあなたが、死ぬことに何の恐怖も感じられなくなったなら、あらゆる防衛がバカバカしくなってしまい、自然に無防備な生き方をするようになるはずです。
それが自我にとっては一番都合の悪いことなのです。それこそが、自我を崩壊させてしまう唯一の生き方だからですね。