過去を忘れようとする必要も、覚えておこうとする必要もない

「明るい未来に向かって生きていく」という良さげな言葉がありますね。何だか無限の可能性が待っている未来に羽ばたこうとする若者のイメージが出てきます。

けれども、この言葉を聞いて、よ~し!と前向きな気持ちになるなら、そこにはきっと落とし穴が待っているのです。

というのも、未来を意識するときには必ず過去がベースにあるからです。過去のことを後悔するから、それを断ち切って未来へと向かおうとするのです。

間違いを反省するなら結構なことですが、後悔するならエゴの思う壺です。子供の頃に、かつての戦争の話や映画を見せられたことがありました。

そのときに、悲惨な過去の過ちを忘れずに、二度と戦争を起こさないためにも、戦争を知らない世代に対して、いい伝える必要があるといったことをよく聞いたものです。

人間というのはこんな馬鹿げたこともやるときはやるんだという事実を知ることには、意味があるかもしれませんが、どうも自分には違和感がありました。

過去にこだわるからこそ、過去を忘れようとするし、後悔するからこそ忘れてはいけないということになるのです。

過去も未来も、思考の中にだけあるものと理解すれば、思考から抜けてなお存在する目の前に今あることに、100%意識を向けることができるのです。

そのときに、後悔も未来への不安も同時に消えていくのですね。過去を忘れようとする必要もないし、過去を覚えておこうとする必要もないのです。