夕方時間の空いたときに、スポーツクラブに行ってサウナに入ると、ほぼ決まって苦手な一人の男性がいるのです。
その人は、多分自分よりもかなり若い人なのだろうと思うのですが、とにかく動作が荒っぽいというのか、やることが雑というのか、ひどく耳障りなのです。
サウナで静かに目を閉じてじっとしているのが好きなのですが、その人が入ってきた途端に、すぐにそれと分かってしまうのです。
その歩くときの音とか、サウナの台に座るときの音、あぐらを組むときの耳をつんざく様なきつい音などが、怒涛のようにやってくるからです。
サウナから出て、水風呂でじっとしているときに、その人が入ってくると私はその大波におぼれてしまうんじゃないかと思うほどです。
ちょっとオーバーに表現しているように聞こえてしまうかもしれませんが、私にとっては本当に苦痛でしかありません。
それでも、人間よくできたもので、毎日のようにその騒音を聞かされていると、徐々にですが慣れてきてしまうのですね。
以前よりも、あまり気にならなくなったというのが実際のところなのです。けれども、私の本音はそんなことがあってはならないと思っているらしいのです。
その人のことをひどく否定し続けたいし、いやでありつづけたいと思っているのです。心の中で文句を言い続けたいと訴えています。
反応しなくなったら、これほど楽なことはないはずなのに、相手の行動を改めさせたいと願っている気持ちがいるのです。
人はそうやって、誰かを否定し続けたいものなのですね。その目的は自分を肯定したいからなのでしょう。そして、その裏には、認めたくない自己否定があるのです。
本当はそれを隠したくて、誰かを責め続けていたいのです。そのことにはっきりと気づくことができると、自分でも笑ってしまいますね。