セラピーの二つの目的

私が考えているセラピーの目的は、大きく二つに分けられます。まず一つ目は、みなさんもよくご存知ですが、心理的な問題による不自由さなどの弊害を少しでも取り除いていくことです。

そして、もう一つは、本当の自分はこの現実という物語の中にいるのではないということに気づいて、それへの信頼を深めていくことです。

これら二つのことは、実はまったく異質なものなのですが、それでもどこかでリンクすることになると思っています。

前者の方は、エゴの癒しとも言うべきもので、人生という物語の中で癒しを進めていくということを意味しています。

確かに、長い間苦しんできたような様々な心や身体の問題が、徐々にではありますが緩和していったり、治ってしまったりすることさえあります。

それに気をよくして、次々と自分の心の奥深くを見つめて、自己改善の道を益々進めて行くことになるはずです。

その過程では、数多くの貴重な気づきを得るという経験をすることになるでしょう。それは本当にすばらしいことです。

けれども、この癒しの道をどこまで続けていったとしても、ゴールは決してやってこないということも確かなことなのです。

それは、長いことそうした癒しを続けてきた人だけが分かることかもしれません。実は、その地点に立った人は、本質的に自分が変わるということは不可能なことなのだと悟るのです。

そして、そのドン詰まり感を根底から救ってくれるのが、後者のセラピーの目的なのです。自分の本質に気づくという体験は、それ以外のどの気づきともまったく異質な体験であるし、それこそが本当の意味での救いなのです。

セラピーのどの段階で、後者の目的へと移行するのかは、クライアントさんご本人にやってくる神の恩寵に委ねられるものなのです。

セラピストができることと言えば、こうした情報をお伝えすることくらいかもしれませんが、個人的には一日も早く恩寵がやってくることを願うばかりです。