心の癒しを進めていくときに、その努力の成果が分かりやすい形となって顕われることは、意外かもしれませんがそれほどは多くありません。
このことは、クライアントさん自身は勿論のこと、セラピストの立場としてもなかなかやるせない思いをしてしまいがちです。
誰だって、成果はできるだけ早く見たいものですから。成果が出れば、それをまた励みにして更なる癒しに万進することもできるわけです。
けれども、実際にはそう思い通りにはいきません。いくら頑張って、言われたことを毎日実行してみても、期待したようには現実は行かないのです。
勿論、私の目の前でみるみるうちに改善されていくクライアントさんもいらっしゃいます。一つの問題を解消していく途中に、それ以外の問題も自然と緩和していくのです。
そういうクライアントさんは、行動に移すことがとても早いのです。とてもまだ無理だろうと思われるようなことでも、やってのけてしまったりします。
しかし、多くの場合にはそうはなりません。人の心の頑固さに私自身もある種嫌気が刺してしまうこともなくはありません。
ところが、実は本当に深いところからの癒しというのは、ご本人にも気づかぬうちに粛々と進められていくのです。
つまり、気づかない状態のまま、心の化学反応とも言える熟成が着実に進んでいっているのです。そして何の理由もなしに、気が付いたら問題が解決していたということになるのです。
あれほど頑固に変化を拒絶していた潜在意識なのに、一体どのようにして変わってしまったのか、まったく理解することができないのです。
そうやって、暗い安置所で樽の中のワインが静かに醸成されていくのと同じようにして、心の熟成が行われていくのです。
ですから、みなさん安心してください。慌てず、焦らず、結果が出なくてもあきらめずにいることです。結果は、忘れた頃に向こうからやってきます。