人が自分を防衛しようとしてする心のメカニズムの一つに反動形成というものがあります。それは、自分を守るために本心とは真逆の思いをでっち上げてそれを隠そうとする心の行為です。
例えば、幼い子供がどうしても買ってもらいたいものが目の前にあるのに、親にそれを許してはもらえないでいるようなときに、そんなものはもういらないというニセモノの思いを作るのです。
いつまでも買って欲しいのに買ってはもらえない状況が続くと、心の我慢が限界を迎えてしまうので、それを防衛するために「欲しくない」という思いがあるとするのです。
その作りこんだ思いというものを「欲しい」という本心の変わりに自分の本当の気持ちなのだとして本心に蓋をしてしまうのです。
こうすることで、どれだけ欲っしても手に入れられないという苦悩から自分を守ろうとするわけですね。これは傍から見ている大人からすると、ダダをこねていた子供がひねくれてしまったと映るかもしれません。
したがって、あまりに可愛そうだからと、親が買ってあげようとしても、もうそんなものはいらないと、頑として譲らない態度に出るかもしれません。
どんな子供であっても、親に抱きしめられることを嫌がるはずがないのですが、少し成長した段階で親に触れられたくないと思うようになる場合があります。
実はこれも反動形成であると言っていいと思います。子供の本音としてはもっともっと親に抱っこしてもらいたいという強い思いがあるにもかかわらず、何らかの理由によってその願いが叶わないとします。
そうすると、子供はそれ以上願望し続けても自分の心が痛いだけなので、どこかで抱っこして欲しいという本心を抑圧するのです。
その時に、抱っこどころか、触れて欲しくもないという本心とは裏腹なニセモノの気持ちを作り出して、それによって本心に蓋をしてしまうのです。
こうすることで、実は親に甘えて抱っこして欲しいを完全に封印することができるわけです。結果として、親には触られたくもないという大人びた反動的な気持ちだけが残ることになるのです。
理性で考えてみて、自分の言動はどうもおかしいなと感じるような場合には、この反動形成が心の中でなされているのではないかと疑ってみることです。
そして自分独りではどうにも、解明できそうにない場合には、プロのセラピストの力を借りてみることも一つの方法かもしれませんね。