意味がないという意味の無意味という言葉を、価値がないという意味合いで使うことがよくあります。つまり、無意味=無価値というように想定しているわけです。
そして「無価値」は当然否定的な言葉の響きを持っていますね。価値がないということですから、それは尊いとか大切なという意味の反対な意味を持っています。
しかし、突き詰めて考えてみると、意味がないということがそのまま価値がないということにはならないということが分かります。
「無意味」つまり意味がないということの本当の意味は、価値があるとかないとかといった価値判断ができないということを指し示しているのです。
たとえば、犬や猫たちにとってお金の価値を判断することはできません。自分の飼い主が自分の口座を作ってくれて、そこに100億円預金してくれても彼らは嬉しくないでしょう。
日本語しか理解できない日本人に、原文のハムレットを渡されてもその価値を感じることは全くできません。書いてある意味が分からないのですから。
このように、意味がないということは、価値を判断することができないということを指しているのであって、価値がないということを言っているわけではありません。
ですが、私たちはどうもここを勘違いして、無意味という言葉を使っているように思います。そして、もう一つとても大切なことがあります。
それは、価値があるかないかは、それを判断する人が決めるということです。対象物の価値とは、それを評価する人が決めているということです。
地球のあちこちにある世界遺産と言われる場所や建物などは、地球上から人類がいなくなってしまったらそれに価値を見出す人がいないのですから何の価値もなくなってしまいます。
私の内面的な標語になっている、「この世界には意味はない」という言葉があるのですが、それは自分はこの世界のあらゆるものに対して価値判断をしないということを示しています。
この世界は価値がないと言いたいのではないということです。価値がないと言ってしまうと、価値判断がそこに入ってしまうからです。
だからこそ、意味がないという言い方をするわけです。なぜそんな言葉が標語になっているかというと、人の苦悩は価値判断から来ることが分かっているからです。
なぜそんなことが言えるのかは、明日に続きを書きます。