吉祥寺にあるセッションルームの裏手に大きくて立派な邸宅が沢山建っている区域があります。見るからに古くからあるお屋敷ふうの邸宅には、それぞれ沢山の植物が植えられています。
そのうちの一軒の道路に面したところに何本もの沈丁花が植えられているお宅があります。ちょうどお庭と道路を分ける塀に沿って植えられていて、その道を歩くととてもいい香りが伝わってくるのです。
私は沈丁花の香りがとても好きで、毎年今頃の時期になるとそのお宅の前を何度もわざわざ通って、その香りを楽しむことにしていました。
今年もそろそろだと思って行ってみたら、残念なことにそのお宅のあった土地全体がまっさらな空き地になっていたのです。
勿論、その沈丁花も一本残らず撤去されてしまっていました。しばらくじっとして、残念な気持ちを受け止めるのに時間がかかりました。
その場所はセッションルームからも近いし、あまり人通りもないためゆっくり安心して立ち止まって香りを楽しむ事が出来る、自分にとっては最適な場所だったのです。
沈丁花の香りを嗅ぐと、なんと言うか昔の何かを思い出すというのか、そういったノスタルジックな感覚になることができます。
具体的に何かを思い出すというのではないのですが、一種独特な不思議な気分にさせてくれるものがあるのです。
普段そういった気持ちを味わうことはとても少ないので、この沈丁花が咲く時期はいつも楽しみにしているのです。
一番の穴場がなくなってしまいましたが、少し足を伸ばせば5分くらいのところに井の頭公園があり、吉祥寺通り沿いには沢山咲いているスポットがあります。
過去はないとコースで何度も教えられてはいるものの、あのなつかしい感覚は理屈抜きに好きですし、忘れたくはないと思っています。