人はその成長過程において、少しずつ自分のアイデンティティというものを確立していきます。その基盤となる時期を自我確立期といい、一般的には4~5、6歳くらいの間に起こります。
その後の12歳くらいまでの間を同一性確立期といって、アイデンティティをしっかりと確立していくことになります。
こうした大切な時期に、子供の存在を自分とは別の存在だとはっきり認識できない親に育てられてしまうと、その子供のアイデンティティが曖昧なまま成長してしまうことになります。
そういう親は、その親自身の幼いころにやはりそうした傾向を持つ親に育てられた可能性がとても高いと言えます。
つまり、分離不安を強く持ち続けてしまった親に育てられた人は同じようにして分離不安を持たされてしまうため、人と分離できない、つまり境界の分からない人になってしまうことが多いのです。
猫可愛がりしたり、溺愛したり、過保護、過干渉などはその典型的なものだといえます。程度を超えた心配性なども同じことが言えます。
そんなふうな親に育てられてしまうと、子供の心のなかにその親の考えや主義主張、趣向などのすべてが入り込んだままになってしまうのです。
一人の人間としての自己同一性、つまり自分とはこういう人間なんだという明確な感覚を持とうにも、それを親の色で塗りつぶされてしまうのです。
そうなると、何歳になってもその子供の独自性が育つ事が出来ずに、その子供の色あいが出てくることがなくなってしまいます。
それはもう自分の人生を生きているとはとてもいえない状態なのです。自分が何者なのか分からないばかりか、そうした状況では生きていることがとても辛いのです。
だから、自分がなぜ毎日生きているのか分からない、自分はなぜ生きなければならないのかが理不尽に感じられたりするのです。
心の癒しを進めていくと、本当の自分というものが次第に顔を出すようになって、それがなんともいえない気持ちのいい体験だと気づいていくのです。
もしも、自分の人生を生きてる気がしないという自覚が少しでもあるのでしたら、何歳からでも遅くはありませんので、真剣に癒しを実践していくことが必要です。