迷惑をかける

多くのクライアントさんとお話しをしていると、みなさんに共通する心情とか信念のようなものがあるということが分かります。

その代表的なものが、「人に迷惑をかけない」で生きるというものです。それさえ守れれば、後は自己責任において何をしてもいいんじゃないのかということです。

自分も若い頃にそんなふうに思っていた記憶が確かにあります。だからその気持ちはとてもよく分かるのですが、今となっては人に迷惑をかけないでいても自分が幸せでなければ何の意味もないと思うようになりました。

人が一人生きていれば、それは自覚できようができまいが必ず何らかの迷惑をかけて生きているのです。これは避けられない事実です。

勿論故意に迷惑をかけてやろうとすることは論外ですが、そうでなくとも誰かに自分のせいで迷惑がかかってしまうというのは仕方のないことです。

迷惑をかけた最も初期の事といえば、例えば第二子が生まれる事でそれまでナンバーワンでいた第一子の立場は脅かされてしまうことになりますね。

つまり、弟は誕生と同時にお兄ちゃんに迷惑をかけているということです。人は誰でも、互いに常に利害が一致するなどということはありません。誰かが得すれば誰かが損をするというのがこの世界の掟です。

人に迷惑をかけたくないという思いは、実は思いやりの心からくるものではなくて、自分を防衛しようとすることから発生する思いなのです。

だからこそ、迷惑をかけないからといって幸せになれるわけではないのです。殊更に迷惑をかけることに過敏になるのは、エゴの反応であるということを知る必要があります。

それを最優先すると、必ず自己犠牲が発生してしまいます。迷惑をかけてはいけないという消極的な気持ちで生きるより、自分が相手を許すのと同じように相手も自分を許してくれるに違いないという思いが大切なのです。