不思議体験

テレビや映画の世界というのは、この現実の世界を仮想の中で見せてくれるものですね。画像は平面であっても、それなりに現実の世界に近いものとして捉えることができます。

最近は、ホログラフィといって、立体画像を作り出す技術が開発されており、平面よりもよりリアルな映像を見ることができるようになってきました。

しかし、いずれにしても私たちはそれを自分の肉体の目で見ることには違いありません。肉体の目でモノを見ること以外に何らかのモノを「見る」ことは一般にできません。

イメージを使ってあたかも何かを見ているかのように錯覚させるということはできます。過去のことを思い出して、相手の顔を見るとか、じっと瞬きをせずに見入っていた映像は、目を閉じても頭の中で見えるように感じることがありますね。

しかし、そういう場合であっても肉体の目で見ること以上にリアリティがあるわけではありません。

ところが、自分が夜寝ようとしてベッドに横になっているときに、意識はそれなりにはっきりしていて決して夢を見ているのではないと分かっていながら、とても不思議な体験をすることがあります。

それは、目をつぶった状態であるにもかかわらず、目で見るよりももっとリアルに何かが見えるという現象なのです。色も鮮やかだし、私は近眼なのですが焦点もしっかりと合っていてものすごく緻密に見えるのです。

しかも不思議なのですが、そんなにはっきりリアルにそれが見えているにも関わらず、何を見ているのか分からないという状態なのです。

自分では何だろう、何が見えているんだろうと思いながら、よ~く見ようとすると、確かによく見えるのですが、残念ながらやっぱり何を見ているのかは分からないのです。

しかし、そのリアルさは尋常ではなく、こんなに鮮やかにくっきりと見えるという経験は、もしかしたら肉体の目で見たどんなものよりもきれいですばらしい感覚ではないかと思えるほどです。

また、その経験をしたいなと思うのですが、残念ながらまたいつそれがやってくるのかは自分では分かりません。ただ、一つだけ思うのは、私たちはそこに物体が本当にあるからこそ肉体の目を使ってリアルに見えるのだと思い込んでいますが、そうでもないんじゃないかということです。

目をつぶったうえに、そこには決してないものをあれほどリアルに「見える」という経験ができるということは、この世界を見るときに感じるリアル感も、もしかしたらそこに何かがあるということとは関係ないのかもしれません。

つづく